ブルーインパルスの「かっこいい」に利用されないように【ラサール石井 東憤西笑】

ブルーインパルスの「かっこいい」に利用されないように【ラサール石井 東憤西笑】

【ラサール石井 東憤西笑】#8

 ブルーインパルスといえば60代以上の人間にはある種の刷り込まれた思い出がある。1964年の東京オリンピック開会式。会場の上空にジェット雲でキレイに描かれた五輪のマーク。その飛行技術に驚かされ、当時少年だった私たちは興奮したものだ。

 そのブルーインパルスが今回の東京オリンピックでも再びそのパフォーマンスを演じるはずだったとは聞いていた。

 それがある日突然、東京の空に美しい直線を描いた。ツイッター上に次々と、青い空に何本もの白いジェット雲がのびる写真が投稿される。私、最初はただ単に「キレイだな」「カッコいい」と思った。何よりもコロナ禍の中、ゆっくり空を見るなんてことがなかったので、久しぶりにのどかなひと時だった。それが医療関係者を励ますためのものだったということはあとで知った。

 そして総理が国会をいったん抜け出してまで空に拍手している映像を見た。それから医療関係者がみんな空を見ている一枚の写真を見た。

「ん、待てよ」という気持ちになった。そして一部の医療関係者の「空なんか見てる暇ない。そんな金あったら現場に回してくれ」という意味合いのツイートを何件か見るにつけ、一般の人が「わーキレイ」と呟いているのに「いいのかな」という思いが頭をもたげてきた。

 ひねくれているのかもしれない。でも、もう50年前の高度経済成長時代の幕開けの無垢な少年ではない。その成長の陰で、公害、薬害、自然災害時の人災、散々国から裏切られる庶民の姿を見てきたのだ。

 あの写真の主役は自衛隊でも戦闘機でもない。晴れた青空であると私は思う。人は8割ぐらい空に萌えているのだ。もしあの戦闘機がこれから他国に出撃するその瞬間であったら、同じように爽やかになれるだろうか。

 航空ショーは、日ごろ馴染みの薄い軍隊(日本では自衛隊)に親しんでもらうために行われる。「強さ」「カッコよさ」をアピールし「国威発揚」するためでもある。

 そうなるといったい誰が考えたのかが気になる。防衛大臣はその質問に「結果が大事だ。プロセスはどうでもいい」と言ってごまかした。言いたくないのはなぜか。

 あの一枚の写真を見てプロは「絶対に偶然撮れる写真ではない。人々の顔が写らずこのアングルにするには計算され尽くした演出がいる」と言っている。そんな予算はどこが出したのか。

■防衛大臣は「自分の発案だ」とブログで告白

 そもそもジェット機を飛ばす予算は?

 1カ月前に米のブルーエンジェルスがNY上空を医療関係者のために飛んだ。今回はその真似であることは間違いない。 後日、大臣が「私の発案だ」とブログで告白。だったら最初から言えばいいはずなんだが。 

 人を殺める銃や兵器が「カッコいい」と思ってしまう気持ちは誰にでもある。でも、その気持ちを誰かに利用されるのは気をつけたほうがいい。

(ラサール石井/タレント)